パワハラは名誉毀損で訴えられる?
- 2022.11.26
- パワハラ

パワハラは名誉棄損として訴えることができるか?
結論としてはパワハラで起こった事象について名誉棄損で訴えることは可能です。
しかし、パワハラの内容で名誉棄損を適用させるにはそれ相応の「証拠」も必要になります。
名誉棄損には「刑事」上と「民事」上のものがある
バラエティ番組などでも、出演者が冗談で「名誉棄損で訴えるからな!」なんて言うことがありますが、実は日本において「名誉棄損」とは「刑法でのもの」と「民法でのもの」があります。
○民法における「名誉棄損」
日本の民法上の名誉棄損は「不法行為(民法第709条)」となり得ます。
この不法行為としての名誉棄損とは、人が品性・徳行・名声・信用その他の人格的価値に関して社会から受けられる客観的評価及び社会的評価を低下させる行為を言います。
ここで重要なのは「客観的な評価」と言う点。
これは、自分の人格的な価値について各々が持っている主観的な評価=名誉感情を害されただけでは名誉棄損は成立しないということを表しています。
ですが、しっかりとした証拠などの客観的に事実の認定において、名誉棄損が認定された場合は、民事上の損害回復として、金銭による賠償が原則として可能です。
これは民法第417条の金銭賠償の原則に由ります。
他には、民法第723条の「名誉を回復するのに適当な処分」を裁判所が命じた場合は、その措置として具体例で言えば謝罪広告を掲載するなどがあります(個人間のトラブルではこうした措置はめったにありませんけれど)。
○刑法における「名誉棄損罪」
刑法における名誉棄損罪とは、公然と事実を適示し、ヒトの名誉を棄損した場合に成立する、と刑法第230条第1項に示されています。
この法律による罰則は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金となっています。
刑法の名誉棄損罪を構成する場合、民法の名誉棄損として不法行為になることはよくあります。
刑法の名誉棄損罪は、「事実」を「公然」と示すという部分がポイントで、これだけ取ってパワハラに重ねてみると上司としては「事実」を示しているので、パワハラと思わない人もいるかもしれません。
しかし、例えば離婚をしたとか、前の職場を不倫で辞めているとか、本人にとって仕事と関係ない、しかも人間関係を構築する上で伏せておきたいような事実を、多数の前で示されるのは著しい名誉棄損です。
他にも、難治性の病気であることや、親類に事件の加害者がいるような場合、たとえそれが事実であったとしても本人が望んでいないのであれば、決して公にされることはあってはなりません。
パワハラの裁判では
これまでお伝えしたように、パワハラの名誉棄損には、民事上のものと刑事上のものがあるわけですが、実際に自分が受けているパワハラがどちらに該当するかは、証拠と内容によって判断が変わってきます。
損害賠償請求を考えたいのであれば、弁護士など、法律の専門家と相談して、より自分の名誉が回復できるであろう方法を選ぶのが適当でしょう。
相手に刑事罰を、と考えるのであれば、それは刑法での適用を考えて動かなければなりませんが、だとしても、弁護士との相談の結果、不法行為で動いた方が有利であるとアドバイスを受けることが多いかもしれません。
加害者に対する処罰感情があるとしても、最終的に自分が一番「名誉を回復できる」道を合理的に考えることが必要といえるでしょう。
-
前の記事
自分で出来るパワハラされないための防止策、撃退方法とは? 2022.11.23
-
次の記事
パワハラなどに我慢出来ない時の相手への伝え方 2022.12.13